ポリファーマシーを防ぐには②入院中の減薬

こんにちは。

前回は、私が行っている『入院してきた患者さんの薬の減らし方』をご紹介しました。今回は、入院してから少し経った患者さんの減薬方法について書きたいと思います。

私なりのやり方なので、これが絶対に正しいというわけではありませんのでご了承ください(^^)

①薬歴をチェックしてDrへ伝える

定期的に患者さんの薬歴を確認します。一度処方された薬が今は必要なくなっていたりしないかの確認です。検査値と合わせてチェックします。

病棟担当薬剤師が常駐している病棟では、その担当薬剤師が最低でも週に1回は処方薬や副作用などを確認しています。一般病棟や障害者病棟、療養病棟などがそれにあたります。

しかし回復期病棟には担当薬剤師がいても算定は取れません。そのため、回復期の患者さんの内服薬に対してのチェックは疎かになりがちです。私が勤めている病院には、常駐ではありませんが回復期病棟にも担当薬剤師制を導入しています。そのため、自分が回復期病棟担当薬剤師になった際は定期的に内服薬を確認するようにしています

特に降圧剤は要注意です。入院したばかりのタイミングは、患者さんも生活環境が変わったばかりのため、血圧が安定していないことが多いです。そのため、降圧剤は入院直後のカンファレンスでは(あまりにもおかしい血圧でない限り)あまり触れません。

しかし入院中は食事も管理されていますし、リハビリで運動もします。高血圧患者用の食事を続けていると、血圧がだんだん下がってくることが多いです。

以前担当した患者さんで、徐々に血圧が下がってきてふらつきが起きるようになってしまった方がいらっしゃいました。降圧剤は3剤ほど内服していました。本人からの訴えと看護師からの指摘があったため、Drに減量していただくように伝えました。

こういったことがあったため、複数の降圧剤を内服している方の検査値は要チェックしています。

②カンファレンスで確認

私の病院ではポリファーマシーを防ぐためのカンファレンスがあります。参加者はDr、薬剤師、病棟看護師、栄養士、リハビリ科です。

このカンファレンス、もともと薬剤師がやりたくて各職種に相談し、始まりました。近年問題視されているポリファーマシー。これを減らすために、様々な職種が話し合う機会があった方がいい、ということでスタートしています。

病棟看護師やリハビリ科から、カンファレンスで話し合ってもらいたい患者さんがいればピックアップしてもらいます。例えば今までであったのは“日中眠そうでリハビリが進まない”、“血圧がいつも高め”などです。

日中眠そうであるなら眠剤が出ている可能性が高いので、そこを確認します。また、血圧がいつも高めの方の場合は、栄養士に高血圧食なのかも確認します。リハビリを行う前も血圧を測っているため、血圧に関してはリハビリ科にも話を聞きます。

このように話し合い、「じゃあこの薬を中止した方がいいかもしれない」となればDrに処方箋を書いてもらい、正式に中止となります。

また、患者さんのピックアップは薬剤師が行うこともあります。「たくさん服薬していますが副作用のような症状は起きていますか?」というようなことを看護師やリハビリ科に聞いたりします。

以前入院していた患者さんで、血圧が高い女性の方がいらっしゃいました。その方はまだ40代で脳出血後のリハビリ目的で入院された方でした。今まで血圧を測ったことはないそうで、さらに「病院食は味がしない」とおっしゃっていたことから、自宅での味付けは濃いめであることが予想できました。カンファレンスでこの方について話し合った際、栄養士から「まだ高校生のお子さんがいるため、退院後も食事の味は濃くなってしまう可能性があります」と指摘がありました。そのため、降圧剤を増やして効果を見ていくこととなりました。退院後は食事管理を行うようにし、徐々に血圧が低くなるようならかかりつけ病院で減薬も可能であることを指導し、納得されて退院されました。

様々な職種で患者さんについて話し合うことによっていろいろな観点から考えられるため、減薬だけでなく、その患者さんに必要な薬を増やすこともあります。

以上が私が行っている主なポリファーマシー対策です。Drは多くの患者さんの状態、症状、検査値などを確認しています。しかし、Drも人間なので見逃しがある可能性があります。薬剤師も検査値と内服薬を確認し、患者さんの症状が少しでも楽になるように補助していきたいですね。

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