鉄剤のあれこれ

こんにちは。今回は鉄剤のあれこれについてまとめていきます。

フェロミアとフェロ・グラデュメットの違い

まずは鉄剤としてよく処方されている『フェロミア錠(顆粒)』と『フェロ・グラデュメット錠』の違いについてご説明します。

フェロミア

鉄イオンは胃腸粘膜を刺激し、吐き気や食欲不振などの消化器症状を誘発します。

フェロミア錠・顆粒は非イオン型クエン酸第一鉄Naを主体とする製剤です。非イオン型のため、鉄イオンを遊離せず、消化器症状を起こしにくいように製剤化されています。

また、鉄剤はビタミンCと一緒に内服すると鉄の吸収が増強されるため、よく併用されると思いますが、フェロミアは『クエン酸』との化合物なので、ビタミンCの併用が無くても問題ありません。

フェロ・グラデュメット

フェロ・グラデュメット錠は、多孔性のプラスチック格子の隙間に硫酸鉄を含有しています。そのため徐放性を持ち、胃の中で急速に鉄が放出されることがないため、消化器症状が起きにくいとされている製剤です。

どちらも製剤的工夫により副作用が起きにくいようになっていますが、それでも鉄剤は消化器症状の報告が多い薬剤になるため、患者さんには事前に説明しておく方がいいと思われます。

便の色

鉄剤を内服すると、吸収しきれなかった鉄剤が体内で酸化されて排出されるため、便の色が黒くなります

前回の【尿の色が変わる薬剤】と同様に目に見えてわかる変化のため、患者さんが不安になる原因になります。服薬指導時に説明することを忘れないようにしましょう。

また、消化管出血などが起きている場合も便が黒くなります。その場合、鉄剤を内服していると便の色で症状の判断が難しくなることもあるため要注意です。

飲む期間

鉄剤は、鉄欠乏性貧血の方に処方される薬剤です。貧血の症状といえばめまい、立ちくらみなどです。内服後比較的早く貧血症状が改善されてくると思いますが、「じゃあもう飲むのやめていいか」とはなりません。

血液に関わる鉄分は、主に肝臓に貯めてある『貯蔵鉄』と血中のヘモグロビンの中にあります。貧血になるとまず、貯蔵鉄が減少していきます。その後ヘモグロビンが減っていき、貧血症状が出てきてしまいます。

鉄剤内服後、鉄が吸収されてヘモグロビンの合成に使われていきます。すると徐々に貧血症状は改善していきます。しかし、この時点ではまだ肝臓の貯蔵鉄は回復していません!そのため、ここで内服をやめてしまうとすぐにまた貧血症状が起きてしまいます。

貯蔵鉄まで回復させるとなると、内服期間は数ヶ月かかります。人によっては1年以上かかることもあります。貧血改善を目指すため、内服には時間がかかるかもしれないことを伝えておきましょう。

今回は以上です。鉄剤は副作用も多く、患者さんのQOLが下がりやすいですが、内服すれば貧血症状が徐々に改善されていくため大切なお薬です。服薬指導時に伝えることがいくつかあるため、忘れないようにしましょう。

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