こんにちは。今回は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(以下PMDA)が出している医薬品情報のうち、『医薬品回収のクラス』について確認いたします。
PMDAでは各メーカーが公表している薬品回収情報を年度別、クラス別で記載しています。
クラスごとに何が違うのでしょうか。
クラス分類
医薬品回収のクラスは健康への危険性別によりⅠからⅢまであります。PMDAのHPでは、クラスの違いについて以下のように記載しています。
クラスⅠ
『クラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況をいう。』
クラスⅠ 回収事例
記憶に新しい事例として、2020年度【イトラコナゾール錠50mg「MEEK」】の件があります。
製造過程において、イトラコナゾール錠の中にベンゾジアゼピン系であるリルマザホン塩酸塩水和物が混入し、内服した患者にふらつき、意識混濁などの症状が起きてしまった事故です。死亡事例も起きているため、クラスⅠとなっています。
クラスⅡ
『クラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。』
クラスⅡ 回収事例
クラスⅡの回収事例の原因として多いのは、『【再試験で適合】とされていたものについて再試験が実施されていないため自主回収』です。基本的に健康被害の報告はないですが、『期待した薬効が得られない可能性がある』として回収されています。
クラスⅢ
クラスIIIとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。
クラスⅢ 回収事例
『健康被害の原因になることはまず考えられない』との記載があるため、医薬品自体に問題はありません。多い事例としては、『包装パッケージなどの記載・表示にミスがあった』として回収されています。
クラスⅢで多いのは化粧品や医薬部外品などが対象となっていることが多いです。
薬剤師の対応は?
医薬品回収の情報を得た場合、薬剤師はすぐに対応しなければいけません。
MRからの連絡や、ロット番号が公表されるため、まずは当該ロット番号が勤務先にあるか、過去にあったかを確認します。回収する医薬品の範囲の検討、回収方法の検討、患者への対応方法の検討など、薬剤師がしなければいけない業務は多岐にわたります。場合によっては、患者へ連絡し、対象医薬品を回収、代替え薬を渡さなければいけません。代替え薬への変更は薬剤師のみの判断ではできないため、事前に主治医へ連絡することも忘れてはいけません。(代替え薬への変更は無償)
クラスⅠの回収ともなるとテレビのニュースなどで知る患者もいらっしゃると思います。その場合は「私の薬は大丈夫なの?」というように連絡が来るかもしれません。該当ロット番号は回収となりますが、それ以外のロット番号であれば回収する必要はありません。その説明も、患者に対して丁寧に行います。
今回は医薬品回収のクラス別の説明、薬剤師の対応について簡単に説明しました。過去に薬剤師国家試験にも出ていますし、先日イトラコナゾール錠の事故があったばかりなので薬剤師の行動が注目される内容だったと思われます。
『回収』となると、薬剤師の業務負担はかなりのものになります。しかし患者の健康状態を考えると早急に対応しなければならない内容です。こういうときにすぐに対応できるようにさまざまな書類の保管や「まず何をすべきなのか」を考える対応力が必要なんだなと、実感しますね。